まず、当ブログをご覧いただいてる皆さんにお詫びいたします。
3日連続で「長期積立型NISA」の投稿となってしまいました。
しかも書いている内容は、「第3の波」だ、いや「渦潮」だと書いてきて、どうも「さざ波」に落ちつきそうで、まるでコメディです。
「長期積立型NISA」をめぐる動きのまとめ
※ ここからは、現行のNISAを「現NISA」、長期積立型NISAを「長期NISA」として表記します。
長期NISAについては、これまで金融庁vs財務省、自民党税調を巻き込んで色々と情報が錯綜しています。(そして僕自身がそれに振り回されて、3日連続投稿となっています。)
これまでの流れを(僕の妄想で)簡単に振り返ると
出来が悪いといわれているNISAをもっと使ってもらうため、
1年間の投資限度額を1,200千円から600千円に半減する代わりに
運用期間を20年に一気に伸ばしちゃえ!
年金の運用も厳しくなってくるし、
国民の自己責任でやってもらうためにも
少し運用を緩めてやるか~
下っ端の
罰として、1年間の投資限度額600千円に減らすのはいただきで、
運用期間は10年間までに抑えてやる!
自民税調には、「10年を超える税制優遇措置は前例がない」とでも言っとけ
金融庁もこれで折れてやれ
でも、
仕方ない。1年間の投資限度額を600千円から400千円に削減する代わりに運用期間を20年だけは認めてもらおう。
これで長期NISAは骨抜きだ
…とこんなやりとりがあったかどうかわかりませんが、次の記事が出ています。
〇NISA一本化を検討 積立型と現行型、与党大綱案 (日本経済新聞)
これによると、
現行のNISAは年間の投資上限が120万円に設定されているが、枠を使い切っている人はほとんどいない。5年の非課税期間が短いとの指摘もある。政府・与党は今回の税制改正で新たに積み立て型の新制度を創設する。積立NISAの上限は年間40万円で非課税期間を20年とする。個人の長期投資を促す仕組みだ。
税制改正大綱案は「少額からの積立・分散投資に適した制度への一本化を検討する」と明記。中長期的な検討課題との位置づけだが、現行のNISAはなくなり、積み立て型に徐々に一本化していくとみられる。より個人投資家が利用しやすい制度にする。
とのことです。
この裏には、(多分)上述のようなやりとりが行われていたのだと思います。
2017年度税制改正大綱のNISAの運用
今回明らかになったNISAの運用はどうなるのか。
それを検証する前に、現NISAとこれまで浮かんでは消えた長期NISAから振り返ってみます。
15年後に6,600千円 → 単純利回り 年利 0.67%
②自民税調当初・金融庁長期NISA
30年後に7,310千円 → 単純利回り 年利 0.73%
③財務省長期NISA
20年後に6,610千円 → 単純利回り 年利 0.51%
※ なぜこうなるかは、「長期積立型NISAは”第3の波”か”渦潮”か?」を参照。
それでは改めて、今回のNISAを同様に検証してみます。
【試算の前提:現NISA試算との違いのみ】
・1年間の投資限度額400千円まで投資。(10年間の投資総額4,000千円)
・20年間経過後、非課税口座から課税口座へ。
(ロールオーバーは不可と仮定)
今回の自民税調の長期NISAでは、「10年間の投資総額4,000千円 → 30年後に4,870千円(122%)」となります。
これを先ほどのNISA制度と比較すると、
15年後に6,600千円 → 単純利回り 年利 0.67%
②自民税調当初・金融庁長期NISA
30年後に7,310千円 → 単純利回り 年利 0.73%
③財務省長期NISA
20年後に6,610千円 → 単純利回り 年利 0.51%
④自民税調長期NISA
30年後に4,870千円 → 単純利回り 年利 0.73%
どうでしょうか?
②≒④>①>③の順となります。
確かに今回の自民税調の単純利回りは、当初金融庁の画策した案と同水準となっています。
その意味では、金融庁の面目も保たれています。
「めでたし めでたし」と言っていいのでしょうか?
ここで注意すべきはトータルの運用額です。
現NISAの年間限度額1,200千円から、わずか3分の1となる年間400千円です。
初めに金融庁が主張していた限度額600千円から見ても3分の2です。
これって、月額33千円の投資額にしかなりません。
確かに若いときはこれでも結構な負担ですが、投資機会が10年あるとすると物足りなさが出てくるのではないでしょうか?
長期NISAは、まさに「第3の波」でも「渦潮」でもなく、最悪は脱したものの力強さに欠ける「さざ波」となってしまったのでした。
最初の金融庁案(年間限度額600千円・非課税期間20年)が光っていた分、やや残念な結果です。
記事にあるとおり「将来的には積立型に一本化していく」のは間違っていない方向だと思いますが、老後資金の形成に資する「量」として本制度が十分かというと甚だ疑問です。(さらに言えば、運用期間も20年ではとても足りないと思います。)
なんだか省庁間の綱引きと妥協の産物という気がしてなりません。
また数年したら、見直し論議が出てきて、ちょっとずつ変わっていくんでしょうね、きっと。
思い切った見直しで、国民が今からちゃんと長期投資に取り組める環境が整うことを願ってやみません。
そして個人的には、明日になって、また新しいNISA制度が出ていないことを祈るばかりです。(^-^;
【この投稿以降の関連投稿】
「積立NISA」は40年のビッグウェーブなのか?(12/10)
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