金利差のグラフチャートは「10年-3か月もの」と「10年-2年もの」を掲載
過去記事の要約は 2ページ目に集約
アメリカの「長短金利差」の持つ意味
「短期金利」は1年以内の金利、「長期金利」は1年以上の金利(一般的には10年国債の金利)とされ、長期金利-短期金利の差が「長短金利差」です。
一般的には、長期金利>短期金利なので「長短金利差」はプラスです。
しかし過去に何度かマイナスになったことがあり、その後プラスに転じていく段階で不況が発生しています。
この「アメリカの長短金利差の逆転(=逆イールド)」こそが、アメリカ経済が不況に入る直前に異常を知らせるという説があります。
そして今回のコロナショックも的中!
2020年1月頃から中国武漢から広がりを見せ始めたコロナウイルス。
2020年3月頃には、コロナウイルスはアメリカ・欧州へと広がり、そしてWHO(世界保健機関)によるパンデミックの宣言…
これらを悪材料として、過去最高値を更新していたNYダウは一気に急降下。
NYダウでは、取引一時停止措置であるサーキットブレーカーが1週間に4回発動されるという異例の事態になりました。
また、アメリカの失業者も過去最大の数にのぼり、4/21には石油の主要指標であるWTI先物の価格が一時マイナスになるなど、景気の後退が明らかになってきました。
ちなみに下記ツイートは、2020年4月21日の午前6:05 に驚いて投稿したものになります。
#原油価格 の主要指標である #WTI 先物がマイナスを記録。
原油を買うとお金がもらえるというありえない展開に。石油輸入国の日本にとっては一定のメリットがある反面、世界の経済収縮や中東の石油輸出依存国の政情不安定化につながりかねないデメリットも。 pic.twitter.com/Ymrrlbypn2
— マサ@1級FP & 2020社労士受験生 (@Bqol_Masa) April 20, 2020
しかし、この景気失速は、コロナウイルスの影響だけに起因するものではないと考えます。
当サイトでは、アメリカの長短金利差が「逆イールドから順イールドに戻っていく過程で景気後退(リセッション)が訪れる」という経験則に基づいて繰り返し警鐘を鳴らしてきました。
結果的には、2019年10~11月くらいで逆イールドから順イールドに向かう動きが確認でき、2020年1月には順イールドに入ってきていますので、今回の暴落の予兆をギリギリ捉えられたと思っています。
ちなみに僕自身はというと、この逆イールドの発生を契機として、予防的措置で iDeCoの商品を先進国株式から国内債券にスイッチングしています。
投稿のサマリー 楽天証券にて2017年からiDeCoを開始 これまで一貫して「外国株式 100%」で積立運用 今回これまでの積立分を「国内債券 100%」に変更(スイッチング)、今後の積立配分も同様に これに合わ[…]
おかげで今回の大暴落の影響は、最小限で済みました。(ただしNISAの方は株式だったので影響を受けましたが。)
もし当サイトをご覧いただいていた方で、同様のリスク回避ができた方々がおられれば、愚直に長短金利差を紹介してきた甲斐があったというものです。
参考:2019年長短金利差のアニメ化
2019年の長短金利差の動きを時間軸でわかりやすく見ていただくため、2019.1~12までのグラフをアニメーション化しています。
特に 右側の2019年1月からの動きをご注目ください。
素人がつくったものなので、カクカクしているのはご容赦ください。
途中で緑の〇が出てきますが、ここからマイナス圏に突入したと思ってください。
↑クリックで拡大↑
最後の方で、グラフがⅤ字反転しているのが確認できると思います。
2020.4のアメリカ長短金利差
本稿では、米国財務省証券の市場利回りを基に、「長期金利」を10年・「短期金利」を3か月として長短金利差を出しています。
さらにその変化を平滑化するため、90日移動平均で処理しています。
また、ご要望のあった「短期金利」を2年もので同様に比較した資料も載せています。
10年-3か月金利差のマイナス幅が縮小
さて早速、最新の状況です。
2019年7月から「10年-3か月金利差の90日移動平均がマイナス圏に突入」していました。
その後、マイナス圏から底をうって反転する動きが継続し、長短金利差の90日移動平均はついにマイナス圏からプラス圏に入ってきて、2020年の大暴落を迎えています。
(グラフの見方は記事2ページを参照ください。)
【10年-3か月金利差】
〇2020年4月の90日移動平均はプラス圏を維持し、上昇が加速
〇最新データは、2020.4.30現在で
金利差 0.55%
(対前月比 ▲0.04)
90日移動平均 0.33%(プラス圏)
(対前月比 0.06)
↑クリックで拡大↑
10年-2年の金利差はプラス圏
参考として10年-3カ月利回り(黄色)と10年-2年利回り(緑色)を 90日移動平均処理した直近1年間のグラフも掲載します。
2019.5月頃から2つのグラフが交叉していましたが、現在その差がなくなってきています。
本来は、より長期の金利である緑色(2年)の方が短期の金利である黄色(3カ月)より上に来るべきで、その方向に進んできていました。
ところが、ちょうど逆転しそうなところで、黄色のグラフが低下傾向に入り、現在はほぼ一致してしまっています。
具体の数字を見ていきます。
10年-2年利回り(緑色)の方は、直近のデータでその差が 0.44%。
90日移動平均では、10年-2年利回り 0.32%となっており、前出の10年-3カ月利回り 0.33%とはわずか0.01%の差となっています。
長短金利差の逆転の状況については、「底打ち→プラス圏に再浮上→不況の発生」というシナリオを着実に描いています。
個人的には、今回の長短金利差が比較的浅いところで底打ちしていたため、1989年から1990年にかけての状況に類似し、2020.10頃が警戒時期と考えていました。
しかし、コロナウイルスの拡大によって、実経済へ大きな負荷がかかり、想定よりも随分前倒しで悪影響が出てきたようです。
いずれにしても、長短金利差の分析によって、アメリカの景気ひいては世界経済の行方を一歩先に見通せる可能性があると考えています。
今後も定期的にご紹介していきます。
→ 次ページでは長短金利差とグラフの見方を解説
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