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人は何故「予想どおりに不合理」なのか?

第5章 無料のクッキーの力

クッキー100個を配布する場合、無料であれば、人は社会的公正や欲張りと思われることの影響、自分が多くを取ることによって周囲の人が受け取れなくなる幸福を考えて、1~2個を取るにとどめる。

しかし、これに(低額の)価格を設定したとたん、社会的に何が正しく何が正しくないかを考えることを止め、できるだけ多くのクッキーを手に入れようとするだろう。

経済的交流の場では、私たちは利己的で不公平であり、自分の財布に従うのが正しいと考える。

経済学における需要は価格低下によって増加するが、それは2つの理由による。

1つめが「市場参加者の増加」による需要増(=需要の第一法則)
2つめが「価格低下による購入可能数の増加」による需要増(=需要の第二法則)

この2つの需要増は、価格がゼロに近づく過程では経済学どおりの動きをする。

しかし、価格がゼロであるときには、需要の第二法則が抑制される。
これは、社会規範によって人々に他者の幸福を思い出させ、その結果、
利用できる資源に負担をかけ過ぎない程度にまで消費を抑えるためである。

第7章 先延ばしの問題と自制心

ほとんどすべての人間は、やるべきことを先延ばしする問題を抱えている。
しかし、その弱点を自覚して認めている人の方が、適切な時期での〆切の設定など、事前の決意表明に利用できる機会を使いやすく、そうすることで自力で先送りの問題を克服できる。

先延ばしに対する最善の策は、人々に望ましい行動の道筋をあらかじめ決意表明する機会を与えること
例えば、給与からの天引きでの自動積立制度、友人と一緒に運動を続ける約束など。

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ある望ましい行動が目先のマイナス効果(=罰や不快)につながる場合、たとえ最終的な結果が非常に望ましいものであってもその行動をとるように鼓舞するのはとても難しい。
これに打ち勝つには、長期目標のための
マイナス効果を緩和する、目先の強力なプラス効果(=褒美や満足度)を探すこと

それぞれの問題に対して、正しい行動強制手段をみつけることである。

第8章 高価な所有権

人はあるモノを所有するとその価値を過大評価するようになる。

それには3つの原因~「不合理な奇癖」がある。
①自分が手に入れたものに愛着を感じ始める人間性
②それを失ってしまうことへの嫌悪感
③他人が所有物の取引する視点も自分と同じだと思い込んでしまうこと

また、所有意識には「奇妙な特性」がある。
①何かに打ち込むほどそれに対する所有意識が強くなること
 →組立式家具の方が所有意識を高める。
②実際に所有する前に、それに対して所有意識を持ち始める場合があること
 →ネットオークションで入札した時からその所有を意識し、競ってきた場合に予定以上の入札額を入れてしまう。

所有意識は、物質的なものだけでなく思想についても生じる。
何らかの思想の所有権を得たら、本当の価値以上に高く評価し、その思想を失うことに耐え切れず、なかなか手放せなくなる。

一度、生活の質を上げてしまっても、いつでも元の生活に戻れると考えるのは誤りである。
生活の質を下げるのは損失と感じ、心理的苦痛となる。
そして
そのような損失を避けるためならどんな犠牲を払ってもいいと考える。

これを回避するには、取引に際してあえて自分と目的の品物との間に距離を置き、できるだけ自分が非所有者であるかのように考えること。(=目的物の価値を客観的に判断すること)

自分の所有物を過大評価する傾向は人の基本的な偏向であり、自分自身に関係あるものすべてに対して過度に楽観的になってしまうという性向を反映している。
自分にこのような
先入観があることを自覚して、他人の助言や意見に耳を傾けることが必要である。

第9章 扉を開けておく

私たちは全ての選択の自由を残しておくために必死になるが、そのために他の何かを手放している。
(例えば、子供に様々な習い事を少しずつ経験させようとするあまり、子供と自分の時間、そして子供が一つのことに本当に秀でる機会を手放している。)

私たちは重要かもしれないことの間を行ったり来たりしているうちに、本当に重要なことに十分時間を割くことを忘れてしまう

無用な選択肢を追い求めたくなる不合理な衝動から自由になるにはどうすべきか。

現代社会において、人々は機会がないことではなく、機会が有り余っていることに悩まされている
やりたいことは何でもできるのだが、問題はこの理想にふさわしい生き方をすることである。
私たちはあらゆる方向に自分を成長させないといけないし、人生のすべての側面を味あわないといけない。

可能性の扉を開けておくために力を削ぐのは不毛である。
いくつかの扉は大小に関係なく閉じられなければならない。
そのままでは、本当に開けておくべき扉からエネルギーと献身を吸い取ってしまう。

第10章 予測の効果

同じ出来事に対する評価も、事前の知識や立場によって解釈が異なってくる。
情報を提供することで、予測される喜びを高め、ひいては本当の喜びを高めようとするのは、マーケティングそのものであり、ブランドや製品の信用を築くのに重要である。

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一方で、予測は人生の様々な領域において、私たちが物事をどう経験するかという部分で大きな役割を果たしている。
例えば芸術作品についての専門知識か完全な情報がない場合、私たちが作品からどのくらい感銘を受けるか、あるいは受けるべきなのか見当をつける手がかりとして社会的合図を探す。

第11章 価格の力

信念や予測が、資格や味覚などの感覚刺激に対する知覚や解釈影響を及ぼすだけでなく、主観的な経験ばかりか客観的な経験さえ変化させることで私たちに影響を及ぼすことがある。

プラセボ(偽薬)現象は暗示の力で働く。
それが
効果を発するのは人々が信じるからだ。

一般にプラセボを働かせる予測は2つの仕組みで作られる。
①クスリや治療などに対する信頼や確信といった「信念」
②経験を基にした身体反応による「条件づけ」

クスリの価格による効果も存在する。
同じ薬でも価格が安いと、他の人より少ない効果しか感じない。
これは薬に関して、支払った分に見合うものが手に入ると認識させ、
価格が経験を変化させる場合があることを示している。

私たちは値引きされたものを見ると、直感的に定価のものより品質が劣っていると判断し、実際にその程度の効果発現に留めてしまう。

価格と品質の関係について気にすることをやめた消費者は、値引きされた商品の効果が劣ると決めてかかる可能性が少なく、その効果低下を発現しにくいことがわかった。

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