それでも不安がある方へ
「そうはいってもやっぱり不安」という方に向けて、この報告書は次の3つの年代別に資産形成・管理の指針を与えています。
①現役期(30~50歳代)
②リタイア期前後(50~70歳代)
③高齢期(70歳代以降)
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以下、それぞれの世代について取り組みたいことを僕なりの解釈も加えながら見ていきたいと思います。
現役期(30~50歳代)に取り組みたいこと
長期・分散・低コスト投資
この時期は、なるべく若いうちから「長期・積立・分散投資による資産形成の検討」を始めることが挙げられています。
その理由として、長期・積立・分散投資による効果は、積立を長期にわたり投資先を分散するほど、収益がバラつきにくくなる特徴があるからです。
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ページ右の2つのグラフは、1985 年以降の各年に、毎月同額ずつ国内外の株式・債券に積立・分散投資したと仮定し、各年の買い付け後、保有期間が経過した時点での時価をもとにして運用結果を算出したものです。
保有期間が5年ではマイナスリターンも発生しますが、保有期間が20 年になるとプラスリターンに収斂し、さらにそのバラつきも小さくなっています。
いつでもこうやってうまくいくとは限りませんが、「長期・積立・分散投資」の効果は理解いただけると思います。
また、これに加えて、僕は「低コスト投資」の重要性も指摘したいと思います。
僕たちのような個人投資家が証券会社を通じて投資する際、さまざまな手数料を払わなければなりません。
例えば、投資信託商品では、購入時にかかる購入手数料、保有に係る管理費用である信託報酬、売却に伴い支払う信託財産留保金などがあります。
このうち、特に気をつけてほしいのが「信託報酬」です。
他の2つは購入時・売却時に1回かかるだけですが、「信託報酬」は保有している間ずっと徴収されるので、長期投資をする際には特に注目してください。
これも含めて、僕は「長期・分散(時間的+資産クラス)・低コスト」での投資を心がけています。
時間を味方に
現役期の一番の強みは「時間」です。
実際に老後資金が必要になるまでの期間を生かして、投資機会はもちろん、自己投資(知識や資格など)や経験(副業や人的ネットワークなど)の機会を最大限に活用することです。
そのためには、少額からでもコツコツ投資をしていくことが必要ですが、その時に「つみたてNISA」と「iDeCo」のどちらを選ぶべきでしょうか。
僕自身は、つみたてNISA → iDeCo の順に考えるべきだと思います。
つみたてNISAは、口座維持の費用が不要・お金が必要な時には自己都合でも途中解約可能ですが、iDeCoは、年額手数料が必要・自己都合の途中解約が不可です。
iDeCoでは、掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となりますが、所得が高い人ほど節税効果が高まります。
若いうちは、結婚・出産・転職などいつ特別な支出が必要になるか見通しが立ちにくいものです。
ですので、つみたてNISAの毎年40万円の限度額に達したのち、iDeCoの積立(積立額はなるべく許容額いっぱいまでの方が効率的)に移行した方が良いと思われます。
リタイア期前後(50~70歳代)に取り組みたいこと
この世代は、特に企業に勤めている場合、50 代から 60 代において定年退職が視野に入ってくる時期になります。
よって、それまでの資産形成状況を踏まえ、その目減りを極力抑えるとともに、将来の計画的な資産の取崩しに向けて行動していく必要があります。
退職金の確認とマネープラン
退職金がある場合は、それを踏まえたマネープラン等を再検討していく必要があります。
まず早めに、退職金の金額や形式(一時金方式か年金方式か)等を確認することです。
そして、一時金方式ならその運用方法(投資・貯金のバランスなど)を考え、投資経験がないなら少しでも投資機会を持った方が良いと思います。
いきなり多額の退職金をもらって有頂天になって、世界一周旅行に行ってみたり、銀行や不動産屋さんの言うなりになって必要性の乏しいリフォームに手を出してみたりして、後悔されている例は枚挙にいとまがありませんから。
老後の収支を意識
次に、公的年金等の定期的な収入や支出、その時点での資産や負債(住宅ローン等)などを自らに「見える化」し、老後の生活に十分な資金状況であるかを確認します
ここで既に十分に老後の資金が賄えていない場合は、早急に手を打つべきことがあります。それは「支出の見直し」です。
報告書では「収入の確保、特に就労継続の検討」を先に挙げていますが、50歳代になってそんなことをやっている時間はないはずです。
(もちろん収入の確保が可能であれば是非取り組んでください。)
それよりも「支出」特に「経常的にかかる支出」の見直しを図ることが先決です。
代表的なところでは、携帯電話契約など通信費の見直し、利用頻度の低いサービスの解除(利用していないスポーツクラブなど)、外食の抑制なんかが考えられます。
その際の見直し基準は、老後の収入で賄い切る支出になっているかという観点です。
「老後になったら見直すから大丈夫」という方は、どうぞお気をつけください。
行動経済学の観点からも、一度上がった生活の質を下げるのは困難です。
人は『生活の質を下げるのは、(たとえ以前の生活レベルに戻るだけでも)損失と感じて心理的苦痛となる。そしてそのような損失を避けるためならどんな犠牲を払ってもいいと考える。』生き物だからです。
→ 興味のある方は、人は何故「予想どおりに不合理」なのか? 第8章 高価な所有権 をご覧ください。
いずれにしても、現在の収入と保有資産を踏まえて、資産寿命を延ばすという観点を持ちながら、支出の内容や額が適正かをよく吟味することが大切です。
中長期的な資産運用の継続と計画的な取崩しの検討
少し早いですが、中長期的な資産運用(長期・積立・分散投資等)の継続・実行と計画的な取崩しの実行を考えておくべきです。
その前提は、リタイア後もまだ 20~30 年は生活が続いていくこと、そして不測の支出に耐えられることです。
リタイア前にすでに長期・積立・分散投資を現役期より行っている場合は、それを続けられるうちは続け、その後は計画的に資産を取り崩していくことが有効です。
また、長期・積立・分散投資を行っていない場合であっても、リタイア期前後から長期・積立・分散投資を始めるのも一つの方法です。
その場合は、つみたてNISAではなく、通常NISAの方が良いと思われます。
通常NISAは、投資期間が2023年までと残り少なくなっていますが、投資限度額が毎年120万円とつみたてNISAの3倍の額まで非課税で投資できます。
ただし、分散期間が限られるため、投資リスクはやや高くなる点に注意が必要です。
適切なアドバイザーの選定
この段階になってくると、自身の資産や収入、退職金や年金などライフプランが複雑になってきます。
よって、自身のみでは難しい場合には、資産運用も含めて、第三者の立場からアドバイスを受けることも考えた方が有効です。
その中に、僕たちのようなファイナンシャルプランナーが選ばれるよう、自己研鑽とともに中立性のある助言に努めていかないといけないですね。
高齢期(70歳代以降)に取り組みたいこと
いわゆる後期高齢者(75歳以上)に足を踏み入れていく段階です。
この世代では、資産の計画的な取崩しを実行するとともに、自分自身の認知・判断能力の低下や喪失に備えることも必要になってきます。
心身の衰えを見据えたマネープラン
この世代になると、心身の衰えも出てきます。
医療や介護の費用が当初想定していたよりも大きな金額であった場合には、資産の取崩しにも影響を与えるでしょう。
特に一時金が必要な有料老人ホームなどへ入居が必要となった場合などには大きな費用が発生しますので、適切なアドバイザーの下で心身の衰えを見据えたマネープランの検討・見直しを図っていくことが必要です。
その意味で、さきほどの現役期のところから、不測の支出に備えたマネープランを意識しておくことが効果的です。
また、認知・判断能力の低下・喪失に備えることも必要になります。
昨今の高齢者ドライバーの事故報道でもそうですが、本人がそれを自覚するのはなかなか困難です。
あらかじめ限度額の設定など使い過ぎ防止のための手段を講じたり、場合によっては「家族信託」や「後見人制度」の活用も考えておくなども必要になるかもしれません。
人生100年時代の歩き方
以上、金融庁のワーキンググループによる「高齢社会における資産形成・管理」に対する検証を行ってみました。
気分を害された方がいましたら、ご容赦ください。
僕が一番言いたかったことは、金融庁擁護でもマスコミ批判でもなく、僕たちが確実に訪れる高齢社会とその社会の一員となることを正面からとらえ、この報告書を「自分ごと」として考えませんか?ということです。
個々人が超高齢社会に備えていく必要性については、以前、僕なりの視点から「人生100年時代に必要な3つの寿命って?」という投稿でも書いています。よかったらご覧ください。
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