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誰がためにAIはある?

このところ、AIを話題にしたドキュメントやドラマが多くなってきました。

人間の良きパートナーとしての位置づけもあれば、人から職業を奪い貧富の差を拡大する敵対者としての位置づけもあります。

また、AIが人間の手を借りず自律的に発達し、人間の能力を超える「シンギュラリティ」といったことも語られるようになっています。

それでは、現在のAIはどのような位置に存在し、今後、どのようなことが起こるのか。
『AI vs 教科書が読めない子供たち 新井紀子 著』を読んで、僕なりに考えてみたことをまとめてみました。

AI vs 教科書が読めない子供たち

筆者の紹介

まず、筆者である新井紀子(あらい のりこ)氏について。

本の筆者紹介などによると、2018年5月現在で概ね以下のとおり。

東京都出身。
一橋大学法学部およびイリノイ大学数学科卒業。
その後、イリノイ大学大学院数学研究科を単位取得退学。東京工業大学より博士(理学)を取得。
専門は数理論理学。
2006年から国立情報学研究所教授。2008年から同社会共有知研究センター長。
2011年から人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクタを務める。
2017年から社団法人「教育のための科学研究所」代表理事として、リーディングスキルテストで中高生の読解力を診断する体制を目指している。

日本人的感覚から行くと、いわゆる文系→理数系へと研究分野を広げたことになります。
純粋文系の自分からすれば、この時点で驚嘆に値する人物です。

文理両面からAIがどのようにとらえられているのか。
本書の流れに沿って見ていきます。

AI技術(≠真の意味でのAI)

筆者の新井紀子氏は、先に紹介したとおり、AI技術を用いて東大合格を目指す人工知能プロジェクト(以下「東ロボくん」)を立ち上げた。

その研究過程や実例を引き合いに、AI技術(≠真の意味でのAI)の限界にも言及している。
一方で、AI技術と同じ仕事で競合する(多くの)人間への警鐘をならしている。

◆ AIとAI技術は違う。

◆ AI技術は音声認識技術や自然言語処理技術、画像処理技術などAI実現のために開発されている技術。

◆ AIは現代数学の延長では本質的に実現できないが、AI技術の向上は着実に進む。

◆ イノベーション(技術進歩)によって代替可能なタイプの労働者の労働価値は、急激に下がる。

◆ AIがコンピューターである限り、計算できないこと、即ち、足し算と掛け算に置き換えられないことには対応できない。

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AI技術がもたらす未来社会への影響

筆者は、AI技術がもたらすこれからの社会への影響について、人間の仕事はAIができないことにシフトしていくべきであると考えている。
それは「物事の意味を推し量り、柔軟に対応すること」である。

◆ 人間の発話(言葉)には意図があり、それに応じるのは「意味」の理解が必要だが、「意味」は本質的な意味で観測が不可能。よって、コンピューターでは扱えない分野。

◆ AIに置き換わられない仕事は、「高度な読解力と常識」加えて「人間らしい柔軟な判断」が求められるもの。

しかし、現状の中高生の読解力や論理的思考ではそのような仕事には対応できない。
そのため、AIと人間が仕事を奪い合う大量失業時代が到来することを懸念している。

さらに読解力と家庭の経済状況には相関がある。(読解力の平均が低い学校ほど、就学補助率が高い)

◆ 中高生を対象に調査したところ、AIに置き換わられにくい分野(同義文判定・推論・イメージ同定・具体的同定)について、(サイコロで答えを決めるように)ランダムに答えるのと変わらない正答率しかでていない。

◆ このような読解力は何で決まるのか。「読書習慣・学習習慣・得意分野」には相関がないが「家庭の経済状況」には相関がある。

◆ AIに置き換わられない能力は「意味を理解する能力」。技術を使いこなす能力だけでなく、ものごとや技術の中身、使うべきポイントや弱点を正しく理解すること。

人間が今なすべきこと

AIと人間が共存していく時代は確実に訪れる。
そのときに対立関係に陥らないための解決策としては、人間が教科書レベルに記載されている内容を正確に読み解き、理解できるような能力をいち早く身につけ、常識と柔軟性を合わせ持った職業人となることを提起している。

◆ AIと共存する社会で、多くの人々がAIにはできない仕事に就くための能力を身につけるには、中学校を卒業するまでに中学校の教科書を読めるようにすること。

◆ ただし、それができなくても、読解力や論理的思考の発達はどの年齢であっても成長可能。

◆ AI時代に残っていく仕事の一つが「何の仕事とははっきり言えないけれども人間らしい仕事」。世の中の困ったことを発見し、それを解決できれば、そして、その需要が供給を少しでも上回れば、現在は存在しない仕事であってもAI時代に生き残っていける。

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AIは誰のために存在するのか?

本書では、AI技術(≠真の意味でのAI)を明確に規定し、その進歩の中で未来に何が起こるかを順序立てて評価・紹介されています。

このため、専門知識を持たなくても現在のAI技術の実像がわかりやすく、また、実際の東ロボくんプロジェクトの進捗にそった読み物としても面白く読み進められました。

AIは人間を超えない

僕自身の考えとしては、筆者の危惧するところは理解できるものの、社会全体としては、AI技術が人間の判断を「手助けする」社会へと段階的に移行していくのではないかと考えています。

その過程で、一部の仕事については、AIにとって代わられることも出てくるでしょう。
しかし筆者も指摘しているとおり、AIに不足する「読解力や論理的思考」は、どの年齢であっても成長可能です。

僕自身も学生時代から社会人へと様々な人々や出来事に触れる中で、良いところを学び、将来を自分自身で考えることで、少しずつですが成長できたと思っています。

その意味で、自分の仕事や価値観を固定化せず、変化に柔軟に対応すること、そのために常に自分の頭で考えて行動することが大切であると思います。

AIが自らの判断力や決定権を持たない以上、それをハンドリングするのは人間です。
その意味で「AIは特定の誰かのために存在するものではない」ということになります。

これを肝に銘じて、人間しかできない人間らしい職業人になっていかなければと感じました。

AI時代を乗り越えるために

また、本書ではAI時代に必要な読解力について、「読書習慣・学習習慣・得意分野」とは相関がないが、「家庭の経済状況」には相関があると指摘されており、一定の経済的豊かさがこれからのAI時代を乗り越える要件になることも危惧されます。

その意味で、最低限の経済金融知識を身につけて、自らの資産を活用していく手段を手にしておくことが大切ではないかとも思ったところです。

AI vs.教科書が読めない子どもたち [ 新井 紀子 ]

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